気分変調症は持続性抑うつ障害とも呼ばれますが、その特徴はほぼ1日中持続する抑うつ気分が長期間続くことです。不適応感、自責感、過敏性、怒り、引きこもり、興味の喪失、活力減退、生産性低下などの症状が見られます。以前は抑うつ神経症と呼ばれていました。
気分変調症は患者が常時落ち込んでいると訴えることによってうつ病と区別されます。症例の多くは早発発症で小児期から青年期に発症します。
うつ病では症状が客観的なのに対して、気分変調症では主観的な徴候が目立ちます。性欲の減退や焦燥感、精神運動抑制は認めません。気分変調症は非常に長期的な経過、気分の易動揺性、軽度の抑うつという特徴を持ちます。
気分変調症は一般人口の5~6%が罹患します。やや女性に多く、未婚の若者や低所得者に多く見られます。
気分変調症とうつ病は生物学的基盤は類似していますが、病態生理は異なっています。デキサメタゾン抑制試験やTRH刺激試験によって検査できるという研究もあります。
DSM-5による気分変調症の診断基準では、少なくとも2年間以上(小児や青年期では1年)抑うつ気分が持続している必要があります。
気分変調症の患者の50%は25歳以前に潜行性に発症します。早期発症にも関わらず、治療に至るまで10年程度を要する場合が多いです。患者が症状を単純に人生そのものと考えていることもあります。
歴史的に薬物療法の対象ではないとされ、これまで薬物療法は行わないか精神分析的精神療法の対象者とし長期に観察されてきました。近年は抗うつ薬に有効性を示した報告は多く、一般的に三環系抗うつ薬、SSRI、SNRIが有効であるとされています。また認知行動療法、精神分析療法、対人関係療法などによる心理療法が行われます。