以前は広汎性発達障害と呼ばれ、自閉性障害、アスペルガー症候群、小児期崩壊性障害、レット障害、特定不能の発達障害の5つに分けて考えられていました。
しかし、近年ではこれらは連続性のある疾患の、症状の不均一さによる違いとして捉えられ、「社会的コミュニケーション障害」「限定された反復的な行動」の2つの中核症状を持つ疾患である「自閉症スペクトラム障害」としてまとめられています。
有病率は1%強です。また、男児は女児の約4倍とされます。遺伝的な要因が関与しており、同胞内で2人以上自閉症スペクトラム障害を持つ家庭内では、発症率は50%程度となります。
診断は臨床症状のみで行うため、高い信頼性で診断するための国際的な診断基準(操作的診断基準)が設けられています。
ここでは、「DSM-5」の診断基準を元に、簡易にしたものを紹介します。以下のチェック項目を見てください。
※上記A~Eを満たすと自閉症スペクトラム障害と診断されます。
ADHDは学童の5~8%にみられ、そのうち6~8割は思春期でも診断基準を満たし、その6割は成人後も続きます。男性は女性の2倍以上の有病率です。遺伝的要因が大きく、家族がADHDの場合の発生率は2倍以上となります。
ドパミンとノルアドレナリンに作用する精神刺激薬がADHDを改善させることから、この2種の神経回路の機能不全が想定されています。ドパミンD4受容体の遺伝子とADHDが関連することが明らかになっています。注意の主要な働きを担う青斑核(ノルアドレナリン神経系の中枢)も関わっていると考えられています。画像上では、前頭前皮質、前部帯状回、淡蒼球、尾状核、視床、小脳の容積減少や機能低下を認めます。これらは、注意や衝動性の制御、運動実行機能などに関わる部位です。
診断は臨床症状のみで行うため、高い信頼性で診断するための国際的な診断基準(操作的診断基準)が設けられています。
ここでは、「DSM-5」の診断基準を元に、簡易にしたものを紹介します。
※上記A~Eを満たすとADHDと診断されます。
疫学で述べたとおり、成長に伴い4割前後は完解します。多動性から消失しやすく、不注意は残存しやすいです。ADHDの症状が思春期まで持続すると、素行症を呈するリスクが高くなります。ADHDに素行症が併存すると、物質関連障害に至るリスクが高くなります。崩壊家庭、ネガティブなライフイベント、素行症、うつ病、不安症などの併存があると慢性的な経過をたどりやすく、なるべく早期に改善することで予後を改善できます。
※米国の代表的な精神医学の教科書であるカプランを基に、各精神疾患について解説します。