大森こころクリニック

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不安障害

パニック障害について

パニック障害

疫学

1~4%が生涯のうちに経験する疾患で、あらゆる年齢で発症する可能性があります。女性は男性よりも2~3倍罹患しやすいです。近親者に発症者がいるとリスクが高まるなど、遺伝的な要素もあるようです。
他の精神疾患の合併が多く、9割は少なくとも一つの精神疾患を合併しています。多い合併症としては、うつ病、不安症群(社交不安障害、恐怖症性不安障害、全般性不安障害、強迫性障害)、心的外傷後ストレス障害、心気症、パーソナリティ障害、物質関連障害があります。

病因

ノルアドレナリン系神経回路の、中枢あるいは末梢での調節異常が関与するとの仮説があります。パニック障害患者では、自律神経において、交感神経系の緊張亢進、反復刺激への順応の遅延、刺激への過度の反応などが認められます。また、セロトニン系やGABA系神経回路の機能障害も関与しているようです。また、呼吸性のパニック誘発物質(二酸化炭素、乳酸ナトリウム、重炭酸塩など)によって窒息警報系が早期に活性化し、過呼吸に至るようです。機能画像研究ではパニック誘発物質摂取時に脳血管収縮がおこるなどの脳血流調節障害が確認されています。

診断

診断は臨床症状のみで行うため、高い信頼性で診断するための国際的な診断基準(操作的診断基準)が設けられています。ここでは、「DSM-5」の診断基準を元に、簡易にしたものを紹介します。

  1. 繰り返されるパニック発作。パニック発作とは、突然、激しい恐怖または強烈な不快感の高まりが数分以内でピークに達し、その時間内に、以下の症状のうち4つ以上がおこるもの
    1. 動悸、心悸亢進、または心拍数の増加
    2. 発汗
    3. 身震い、または震え
    4. 息切れ、または息苦しさ
    5. 窒息感
    6. 胸痛、または胸部の不快感
    7. 嘔気、または腹部の不快感
    8. めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ
    9. 寒気、または熱間
    10. 異常感覚(感覚麻痺、またはうずき感)
    11. 現実感消失、または離人感
    12. 抑制力を失う、または「どうにかなってしまう」ことに対する恐怖
    13. 死ぬことに対する恐怖
  2. 発作のうち少なくとも一つは、以下に述べる一つ以上が1ヶ月以上続いている
    1. さらなるパニック発作またはその結果について持続的な懸念、心配がある
    2. 発作に関連した行動の変化(パニック発作を避けるための回避行動など)
  3. その障害は物質の生理学的作用や医学的疾患によるものではない
  4. その障害は他の精神疾患によってうまく説明されない

※上記A~Dを満たすとパニック障害と診断されます。

治療

1.薬物療法
抗うつ薬とベンゾジアゼピン系抗不安薬が有効です。症状が軽度であれば抗うつ薬単独で、症状が重篤で早期の改善を要するときは抗うつ薬に、即効性のあるベンゾジアゼピン系抗不安薬を組み合わせます。パニック障害は慢性疾患であり、服薬による症状改善後も再発のしやすさが持続し、服薬中断により3割~9割が再発すると言われています。症状改善後も再発予防のための内服を継続し、減薬はゆっくりと行う必要があります。
2.心理社会的治療
認知行動療法が有効です。身体感覚とパニック発作や不安な考えを結びつけてしまうような誤った確信に焦点をあて修正していくとともに正しい知識を身につけていきます。

強迫性障害について

強迫性障害

疫学

2~3%の方が一生のうちに経験する疾患です。精神科の外来では比較的多い疾患です。平均発症年齢は20歳頃で、男性は女性より発症年齢が低めです。三分の二は25歳以前に発症しますが、幅広い年齢で発症する可能性があります。他の精神疾患が併存することが多く、特にうつ病は、強迫性障害の罹患者の7割近くが経験するようです。
また、2~3割でチックの既往がみられます。遺伝的要因もあり、強迫性障害患者の近親者は発症リスクが2~3倍となり、また一卵性双生児では二卵性双生児より一致率が高くなります。

病因

セロトニン作動性薬物が強迫症状を改善することから、セロトニン神経回路の調節障害が病因に関与するとの仮説があります。脳機能画像では、前頭葉、尾状核、帯状束などで活動性の亢進が認められます。不安症が扁桃体経路との関与が強いのに対し、強迫症では皮質経路の関与が強く、強迫症の薬物療法や行動療法ではこれらの機能を改善させるようです。

診断

診断は臨床症状のみで行うため、高い信頼性で診断するための国際的な診断基準(操作的診断基準)が設けられています。ここでは、「DSM-5」の診断基準を元に、簡易にしたものを紹介します。

  1. 強迫観念、強拍行為、またはその両方の存在
    1. 強迫観念:以下の1と2によって定義される
      1. 繰り返される持続的な思考、衝動、またはイメージがあり、それが侵入的で不適切なものとして体験されており、強い不安や苦痛の原因となっている
      2. その思考、衝動、イメージを無視したり抑え込もうとしたり、または何か他の思考や行動(強迫行為を行うなど)によって中和しようと試みている
    2. 強迫行為:以下の1と2によって定義される
      1. 繰り返しの行動(例:手を洗う、順番に並べる、確認する、など)または心の中の行為(例;祈る、数える、声を出さずに言葉を繰り返す、など)であり、強迫観念に対応して、または厳密に適用しなければならないある決まりに従ってそれらの行為を行うよう駆り立てられるように感じている
      2. その行動または心の中の行為は、不安または苦痛を避けるかまたは緩和すること、または恐ろしい出来事や状況を避けることを目的としている。しかしその行動または心の中の行為は、それによって中和したり予防したりしていることは現実的な意味ではつながりを持たず、または明らかに過剰である
  2. 強迫観念または強拍行為が時間を浪費させる(1日1時間以上かける)、または臨床的に意味のある苦痛、または社会的な機能の障害をひきおこしている
  3. その障害は物質(乱用物質や医薬品など)または他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない
  4. その障害は他の精神疾患ではうまく説明されない

※上記A~Dを満たすとパニック障害と診断されます。

経過と予後

5~7割はストレスが引き金となり発症します。著明な改善は2~3割程度で、4~5割は中等度の改善、残りの患者は不変か増悪します。強拍行為への抵抗がなく没頭すること、小児期の発症、奇妙な強拍行為、入院を要する、うつ病を合併するなどは予後不良因子です。また、社会職業適性が良い、誘因が存在する、症状が挿話的であるなどは予後良好因子です。

治療

1.薬物療法
抗うつ薬が有効です。通常用量で使用でき、使用開始後4~6週で効果が現れ始めますが、効果が最大となるのは8~16週です。使用を中止すると大部分で再発します。効果が不十分の場合の増強療法としては、気分安定薬(バルプロ酸、カルバマゼピン、炭酸リチウムなど)や抗精神病薬が併用されます。
2.心理社会的治療
行動療法として、暴露反応妨害法が有効です。強迫観念の回避行動としての強拍行為を徐々に制限することで脱感作をおこなっていきます。

※米国の代表的な精神医学の教科書であるカプランを基に、各精神疾患について解説します。