1~4%が生涯のうちに経験する疾患で、あらゆる年齢で発症する可能性があります。女性は男性よりも2~3倍罹患しやすいです。近親者に発症者がいるとリスクが高まるなど、遺伝的な要素もあるようです。
他の精神疾患の合併が多く、9割は少なくとも一つの精神疾患を合併しています。多い合併症としては、うつ病、不安症群(社交不安障害、恐怖症性不安障害、全般性不安障害、強迫性障害)、心的外傷後ストレス障害、心気症、パーソナリティ障害、物質関連障害があります。
ノルアドレナリン系神経回路の、中枢あるいは末梢での調節異常が関与するとの仮説があります。パニック障害患者では、自律神経において、交感神経系の緊張亢進、反復刺激への順応の遅延、刺激への過度の反応などが認められます。また、セロトニン系やGABA系神経回路の機能障害も関与しているようです。また、呼吸性のパニック誘発物質(二酸化炭素、乳酸ナトリウム、重炭酸塩など)によって窒息警報系が早期に活性化し、過呼吸に至るようです。機能画像研究ではパニック誘発物質摂取時に脳血管収縮がおこるなどの脳血流調節障害が確認されています。
診断は臨床症状のみで行うため、高い信頼性で診断するための国際的な診断基準(操作的診断基準)が設けられています。ここでは、「DSM-5」の診断基準を元に、簡易にしたものを紹介します。
※上記A~Dを満たすとパニック障害と診断されます。
2~3%の方が一生のうちに経験する疾患です。精神科の外来では比較的多い疾患です。平均発症年齢は20歳頃で、男性は女性より発症年齢が低めです。三分の二は25歳以前に発症しますが、幅広い年齢で発症する可能性があります。他の精神疾患が併存することが多く、特にうつ病は、強迫性障害の罹患者の7割近くが経験するようです。
また、2~3割でチックの既往がみられます。遺伝的要因もあり、強迫性障害患者の近親者は発症リスクが2~3倍となり、また一卵性双生児では二卵性双生児より一致率が高くなります。
セロトニン作動性薬物が強迫症状を改善することから、セロトニン神経回路の調節障害が病因に関与するとの仮説があります。脳機能画像では、前頭葉、尾状核、帯状束などで活動性の亢進が認められます。不安症が扁桃体経路との関与が強いのに対し、強迫症では皮質経路の関与が強く、強迫症の薬物療法や行動療法ではこれらの機能を改善させるようです。
診断は臨床症状のみで行うため、高い信頼性で診断するための国際的な診断基準(操作的診断基準)が設けられています。ここでは、「DSM-5」の診断基準を元に、簡易にしたものを紹介します。
※上記A~Dを満たすとパニック障害と診断されます。
5~7割はストレスが引き金となり発症します。著明な改善は2~3割程度で、4~5割は中等度の改善、残りの患者は不変か増悪します。強拍行為への抵抗がなく没頭すること、小児期の発症、奇妙な強拍行為、入院を要する、うつ病を合併するなどは予後不良因子です。また、社会職業適性が良い、誘因が存在する、症状が挿話的であるなどは予後良好因子です。
※米国の代表的な精神医学の教科書であるカプランを基に、各精神疾患について解説します。