大森こころクリニック

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統合失調症

統合失調症について

統合失調症

歴史

古代ギリシャにおいて、統合失調症の症状と思われる妄想、認知機能の低下、パーソナリティの変質などが記述されています。19世紀に入ると、青年期にこれらの症状をきたす疾患が「早発性認知症」と呼ばれました。クレペリンは間欠的に症状が出現する期間と正常な期間がある躁うつ病と早発性認知症を分けました。また、ブロイラーは早発性認知症を、より症状を表現する「統合失調症」という用語に置き換えました。

疫学

約100人に1人が生涯のうちに発症します。9割は15歳~55歳で発症します。有病率の男女差はありませんが、男性は10~25歳、女性は25~35歳と40歳過ぎが好発年齢です。遺伝的要因も関与しており、1卵生双生児の場合の発症一致率は50%となります。

病因

ドパミン受容体拮抗薬である抗精神病薬が症状を改善し、ドパミン作動薬(コカインやアンフェタミンなど)が精神病症状を誘発することから、ドパミン仮説が提唱されています。ドパミン路としては、中脳皮質路や中脳辺縁系路が関与すると考えられています。
また、近年ではセロトニン過剰と陽性症状・陰性症状、ノルアドレナリン報酬神経系内のニューロン変性と快感消失、抑制性GABA作動性ニューロンの喪失とドパミン作動性ニューロンの機能亢進、神経ペプチドの機序変化による神経伝達物質の作用への影響、グルタミン酸による神経毒性、ムスカリン受容体やニコチン受容体の減少による認知機能障害などの可能性が提唱されています。

診断

診断は臨床症状のみで行うため、高い信頼性で診断するための国際的な診断基準(操作的診断基準)が設けられています。
ここでは、「DSM-5」の診断基準を元に、簡易にしたものを紹介します。以下のチェック項目を見てください。

  1. 以下のうち二つ以上、各々が1ヶ月以上(治療が奏功した場合はより短期)ほとんどいつも存在する
    これらのうち少なくとも一つは1か2か3である
    1. 妄想
    2. 幻覚
    3. まとまりのない発語(頻繁に脱線する、内容が滅裂であるなど)
    4. まとまりのない行動、もしくは緊張病性の行動(興奮、無動、常同行動など)
    5. 陰性症状(感情の平板化、意欲欠如)
  2. 障害の始まり以降の期間の大部分で、仕事、対人関係、自己管理などの面で1つ以上の機能のレベルが病前に獲得していた水準より著しく低下している
  3. 障害の持続的な兆候が少なくとも6ヶ月存在する。この間、基準Aを満たす各症状(活動期の症状)は少なくとも1ヶ月(治療が奏功した場合はより短期)存在しなければならないが、先駆期または残遺期の症状の存在する期間を含んでもよい
  4. 統合失調感情障害と「抑うつ障害または双極性障害、精神病性の特徴を伴う」が以下のいずれかの理由で除外されている
    1. 活動期の症状と同時に、抑うつエピソード、躁病エピソードが発症していない
    2. 活動期の症状中に気分エピソードが発症していた場合、その持続期間の合計は疾病の活動期及び残遺期の持続期間の半分に満たない
  5. その障害は物質(薬物乱用、医薬品など)または他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない
  6. 自閉症スペクトラム症や小児期発症のコミュニケーション病の病歴があれば、統合失調症の追加診断は、顕著な幻覚や妄想が、その他の統合失調症の診断の必須症状に加え、少なくとも1ヶ月(治療が奏功した場合はより短期)存在する場合にのみ与えられる

※上記A~Fを満たすと、睡眠障害と診断されます。

経過と予後

一般的に、予後は女性患者のほうが良好です。女性は男性より発症前の社会生活機能が優れている傾向があり、男性は女性より陰性症状が生じやすいようです。社会的な環境変化などが引き金になりやすく、先駆症状として、診断基準を満たさない程度の非特異的な症状(不安感、落ち着きのなさ等々)が時に1年以上持続します。
初回のエピソード後は寛解してしばらく比較的正常に機能することが多いですが、半数以上は再発を繰り返しながら機能水準が低下します。時間の経過と共に陽性症状の重症度が低下する一方、陰性症状や欠損症状の重症度は高まっていきます。

治療

1.薬物療法
急性期の精神病性の興奮には抗精神病薬やベンゾジアゼピンによる鎮静が行われます。安定期・維持期には抗精神病薬による再発予防を行います。抗精神病薬を継続した場合、1年以内の再発率は2割前後ですが、抗精神病薬を中止した場合、1年以内の再発率は7割前後となります。さらに5年以内でみると8割に達するため、抗精神病薬による維持治療は5年以上行うことが推奨されます。
2.心理社会的治療
デイケア施設等での社会生活技能訓練は、患者の支えになるとともに再発率を低下させます。また、家族による支えを要するため、家族に対してはカウンセラーによる家族療法や、家族会への参加が有効です。地域生活の維持には、包括型地域生活支援が行われることもあります。これは、患者に割り当てられた、精神科医師、看護師、ケースワーカー等々のチームが24時間365日体制で支援を提供するものです。

※米国の代表的な精神医学の教科書であるカプランを基に、各精神疾患について解説します。