大森こころクリニック

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社交不安障害

社交不安障害について

社交不安障害

疫学

1割前後の方が生涯に経験する疾患です。発症年齢のピークは10代ですが、幼少時から出現する可能性があります。遺伝的な要因もあり、家族に発症者がいるとリスクは3倍となり、一卵性双生児だとさらに高くなります。

病因

βアドレナリン拮抗薬が症状を改善することから、ノルアドレナリン神経系の中枢や末梢において、放出の過剰や刺激に対する感受性の強さが病因となっている可能性が考えられています。また、MAOⅠが三環系薬物より有効なことから、ドパミン活性が関与しているとの仮説もあります。SPECT検査では、線条体でのドパミン再取り込みの減少が示されています。

診断

診断は臨床症状のみで行うため、高い信頼性で診断するための国際的な診断基準(操作的診断基準)が設けられています。
ここでは、「DSM-5」の診断基準を元に、簡易にしたものを紹介します。以下のチェック項目を見てください。

  1. 他者の注目を浴びる可能性のある1つ以上の社交場面に対する著しい恐怖、または不安
  2. 自分の振るまい、または不安症状を見せることが否定的な評価につながることを恐れている
  3. その社交的状況はほとんど常に恐怖または不安を誘発する
  4. その社交的状況を回避する、または、強い恐怖または不安を感じながら耐え忍ばれる
  5. その恐怖または不安は、その社会的状況がもたらす現実の危険や、その社会文化的背景に釣り合わない
  6. その恐怖、不安、回避は持続的であり、典型的には6ヶ月以上続く
  7. その恐怖、不安、回避は臨床的に意味のある苦痛や社会的機能の障害を引き起こしている
  8. その恐怖、不安、回避は物質(乱用物質や医薬品など)または他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない
  9. その恐怖、不安、回避は他の精神疾患ではうまく説明されない
  10. 他の医学的疾患が存在している場合、その恐怖、不安、回避は明らかに医学的疾患とは無関係もしくは過剰である

※上記A~Jを満たすと社交不安障害と診断されます。

経過と予後

小児期後期や青年期早期に発症しやすく、慢性的な経過をたどることが多いです。一方で、寛解した場合はその後も良好に経過しやすいです。

治療

1.薬物療法
全般化した社交不安には抗うつ薬やベンゾジアゼピン系抗不安薬が有効です。また、パフォーマンス限局型の社交不安にはβアドレナリン受容体拮抗薬も有効です。
2.心理社会的治療
認知療法や暴露反応妨害法が有効です。認知療法では、発症につながる認知のゆがみを修正していきます。暴露反応妨害法では、不安の出る場所に、軽度のものから順に接し、回避行動を制限することで脱感作をおこなっていきます。

※米国の代表的な精神医学の教科書であるカプランを基に、各精神疾患について解説します。